研究概要 |
まず,複数種類の連続繊維材の引張剛性,強度,靭性およびクリープや疲労などの長期性状に注目したハイブリッド連続繊維材(以下,ハイブリッド材)の設計思想を明確にし,各種評価指標の提案や設計法の構築を行った.特に,繊維材の一部が破断する際に生じる応力変動や強度低下について,各繊維材の含有率に着目した制御指標を提案し,その有意性を実験的に明らかにした.また,衝撃エネルギー吸収性に優れる繊維材を用いて,これらの現象を大きく抑制できることも究明した.さらに,ハイブリッド材の耐疲労・クリープ性や高温耐久性を実験的に検証した. 次に,高弾性繊維材を導入したハイブリッド材を補強材として用いた場合に,RC構造物の使用性指標(鉄筋降伏前の剛性など)が大きく向上されることや,伸度も意識した3種類の繊維材を用いることで,構造物の性能を総合的に向上させる効果も明確に示された.その中,適切な配合設計により補強材の剥離が防がれ,より大きな補強効果が得られることも実証された.そして,各種繊維材を適材適所に用いたFRP (Fiber reinforced polymers)-RC構造形式を提案した. 一方,これらの構造物において,最も重要な破壊モードである繊維材の剥離破壊に関して,複雑なひび割れも考慮して繊維材の接着界面を詳細にモデル化した非線形有限要素解析モデルを新たに構築した.さらに,接着界面の短・中・長期クリープ挙動を実験,解析の両面から検討し,接着界面のクリープ挙動を明らかにした. 最後に,導電性のある各種繊維のハイブリッド化により,電気抵抗変化を利用して補強構造物を自己センシングするシステムを開発した.通常はひび割れがかなり成長するまで検知できないが,繊維材に事前処理を行うことにより,微細なひび割れも検知できるようにした.また,光ファイバをハイブリッド材に混入することによる自己診断システムも開発した.
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