研究概要 |
鉄筋コンクリート構造の劣化現象を,(1)モルタルと骨材からなる複合材料とみなした材料的な劣化,(2)コンクリートと埋め込まれた鉄筋からなる複合構造の構造的な劣化の2種類に分類して,前年度に構築した数理モデルと解析手法を発展させ,統合化することで,局所的な劣化から構造全体に至るひび割れ現象までを統一的に解析可能なシミュレーションツールを開発した。具体的には,コンクリート構造の実際の供用状況を考慮して,ひび割挙動をできる限り忠実に再現することで構造全体の力学挙動を捉え,これをミクロ構造に反映させて,材料内部でのひび割れによる劣化挙動を把握することが可能で,かつその局所挙動を全体構造の材料特性に反映させるという新しいミクロ・マクロ相互作用を評価可能なグローバル・ローカル解析手法である.これは,前年度に開発済みの(a)マクロな浸透/熱伝導・物質拡散・変形性能・強度特性とその経時変化の評価【均質化法の適用】,および(b)鉄筋の腐食・膨張を外的作用としたコンクリートのひび割れ過程【有限被覆法(FCM)による数値解析】を統合化して,飛来塩分の拡散から鉄筋腐食,局所ひび割れをシミュレートし,マクロな剛性低下とマクロスケールのひび割れへの進展を追跡できる解析ツールを整備したものである. 検証として,局所ひび割れに起因して,マクロ変形特性の低下だけではなく,拡散特性が向上すうことで,コンクリート構造全体の劣化に対してより不利に働くことなどを簡単な数値解析によって確認した.また,ひび割れ進展現象については,これまでに開発してきた有限被覆法の精度を高めるだけでなく,非均質構造に対する多重被覆モデリング手法を提案して,複雑なミクロ構造まで対応可能なものになった.特に,鉄筋に対するコンクリートのかぶり距離とひび割れモードとの関係を精度よくシミュレートできることを例示できた.
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