研究概要 |
本課題では,微生物による水源汚染可能性評価手法の開発を最終目標とし,微生物の1)河川への流出,2)地中での移動,3)自浄作用を「微生物水文学」という視点で解析した.1)では大腸菌とレジオネラ属菌を対象とし,大腸菌については,洪水時・平水時の流出パターンから,浮遊物質に吸着した大腸菌の割合は流出結果に大きな影響を与えないこと,自然河川に存在する大腸菌は,病原体の河川流出の解析において有効なモデル微生物である一方,自然環境地域の水質管理ではその存在に配慮する必要があることを明らかにした.レジオネラ属菌については,山梨県内の河川と修景用水の59調査地点中9地点でレジオネラ属菌を検出し,レジオネラ属菌が検出された地点のBOD値,リン酸イオン濃度,第一鉄イオン濃度が特徴を明らかにした.2)では一般細菌の森林斜面内での移動を検討し,一般細菌の斜面内移動方法が水頭勾配・水質により推定した流れの方向と一致すること,浸潤期と乾燥期で水の流れの方向・微生物の移動方向が相違することを示した.3)では,自浄作用に関わる細菌群の存在量や構成は藻類から細菌類への基質の供給により決まり,藻類の存在量を決定する入射日射量が水質浄化機能に大きな影響を与えていること,河川源流域における斜面と湖畔域において,ドジョウ炭素含有率が硝化細菌群の棲息に影響する重要な環境要因であることを示した.本研究により,最終目的である,「病原微生物や化学物質による水源汚染の可能性を評価するための効果的曝露アセスメント手法」の開発のための予備的検討ができた.今後,本検討の成果を踏まえ,さらに数年間のデータの蓄積,手法・対象(微生物・流域)の拡大等により実際的な手法の開発を目指す研究を予定している.
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