研究概要 |
本研究は,(1)グローバル企業の立地.撤退行動によってグローバル・リスクが地方都市へと増幅伝播されるメカニズムを表す理論的枠組を提示し,(2)そこで構築されるモデルを用いて地方自治体が取り得る各種リスク・ヘッジ方策を評価することを目的とする.上記目的を達成するために,本研究ではグローバル企業とその企業が立地/撤退する都市の地方自治体(地主)間の戦略的相互作用を"オプション・ゲーム"と捉えたアプローチを採用する.より具体的には,グローバル企業は,地主の戦略的行動を考慮した上で参入/撤退という"オプション"を行使する最適なタイミングを決定する.一方,地主は,グローバル企業の行動を考慮した上で,自らの期待利潤が最大となるように戦略変数(eg.地代,リスク・ヘッジのための金融portfolio weight,参入許可企業等)を決定する.本研究では,この様な各主体の戦略的行動を完備動学ゲームとして定式化し,各主体の均衡戦略を求める.そして,均衡状態における各主体の期待利潤の特性を調べることによって,グローバル・リスクが各主体に与える影響を明らかにする.さらに,グローバル企業に撤退オプションを与える/与えない(撤退規制)/参入オプションを与えない(立地規制);といった様々なケースでの均衡状態の比較を行ない,グローバル・リスクの存在下で地主がとるべき方策を明らかにする.平成17年度の研究では,上記分析のためのプロト・タイプモデルを構築し,基本的なケースについて,均衡解の分析と撤退リスクの評価を行なった.H18年度の研究では,H17年度に構築したプロト・タイプ・モデルに対して以下のような状況設定の一般化・拡張を施した場合:(1)地主のリスク・ヘッジ手段として,金融市場で取引可能なアメリカン・オプションを利用可能な場合,(2)確率的変動に変動する金利の期間構造を考慮した場合;について,均衡解と撤退リスクの特性を明らかにした.
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