研究概要 |
過去に底質堆積速度,底質中栄養塩濃度分布が測定された霞ケ浦,諏訪湖,宍道湖,木崎湖を研究対象湖沼として,そうした湖沼での底質堆積速度,底質中栄養塩濃度分布に関するデータを収集し,データべース化した. 次に,上記湖沼の数地点において,ダイバーが潜水して深さ1m程度のコアサンカレを数本採取し,その後,2cm間隔でスライスした.湿サンプレに対して,含水率,比重,粒径分布,強熱減量,見かけ密度を測定し,凍結乾燥したサンプルに対してリン,窒素,有機炭素,PAHs濃度を測定した.さらに,熱乾燥したサンプルに対して,^<137>Cs,^<210>Pbを測定した. 過去の堆積速度,濃度鉛直分布の結果と上記の結果を比較した.堆積速度に関しては,過去の報告値と大差ないことがわかった.一方,リンの鉛直分布について,時間軸を合わせて比較すると,いくつかの地点ではピーク値が減少していることがわかった.こうしたリンは水中に移動し,湖外へ流出したことがわかった.また,こうしたデータをもとに,底質を含めてリン,窒素の物質収支が可能かどうかを,検討した.リンの場合,2年間程度の短期間では,底質変化の数値の変動が極めて大きく,物質収支を計算するのは難しいことがわかったが,20年程度の長期になると,湖内での堆積域をうまく推定できると物質収支を合わせることが可能であることを示した. 以上の他,PAHs濃度の鉛直分布の解析を行うとともに,霞ヶ浦で問題となっている濁度上昇現象に関しては,底質変化との関係を解析し,濁度,粒度分布を予測可能なモデルを作成した.また,貯水池における水質-底質間の物質移動をモデル化し,水質実測値を再現することを示すことから,貯水池の水質に及ぼす底質の影響を定量的に評価した.さらに,こうした底質のもととなる降雨時の栄養塩流出負荷に関して,特に都市不浸透域からの流出特性を明らかにするとともに,モデル化を行った.
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