研究分担者 |
田渕 正幸 (田淵 正幸) 函館工業高等専門学校, 一般科目理数系, 助教授 (90321364)
渡辺 精一 北海道大学, 大学院・工学研究科, 教授 (60241353)
戸高 義一 豊橋技術科学大学, 工学部, 助手 (50345956)
梅本 実 豊橋技術科学大学, 工学部, 教授 (90111921)
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研究概要 |
TiNi系形状記憶合金は優れた形状記憶・超弾性特性を示し,携帯電話のアンテナ等様々な分野で応用されてきた。特に最近は低侵襲性医療技術の発展に伴い,ガイドワイヤー,ステント等の医療デバイスへの応用が急速に拡大している。TiNiはまた,強加工により固相状態で非晶質化またはナノ結晶化することが知られてきた。その原因としては,転位密度の上昇による弾性エネルギーの増加が重要であると指摘されてきた。本研究では冷間圧延(CR),ショットピーニング(SP),高圧ねじり加工(HPT),冷間線引などの強加工による,非晶質化ノナノ結晶化したTiNiについて,TEMによる組織観察の結果に基づき,その非晶質化機構について考察した。 その結果,CR, HPTによる非晶質過程は類似しており,加工前の状態がマルテンサイト相(B19'相)であっても加工によりB2相に逆変態し,さらに加工を加えることにより非晶質相へと変化することが明らかになった。また非晶質化の過程で現れるラメラ構造の詳細について調べ,非晶質層をはさんで同じほぼ方位のB2構造層からできていることが明らかになった。このことはマルテンサイト変態の際に格子不変変形として導入される双晶境界が転位の蓄積場所となり優先的に非晶質化することを示唆する。また比較の為に様々な組成のZr・Cu系合金についてHPT加工による非晶質化について調べたところ,マルテンサイト変態を起こすZr_<50>Cu_<50>合金のみで非晶質化することが明らかになった。これはマルテンサイト組織特有の微細な双晶組織が転位の蓄積を促進し非晶質化を起こすことを示す。 また,非晶質・ナノ結晶TiNi合金の医療デバイスへの応用を視野に,冷間線引で強加工したTiNiについてもその組織と特性を評価した。その結果減面率70%まで線引きしたTiNiで非晶質領域が観察された。また線引き材,線引き加工後低温熱処理した線材について引張り試験により応力歪み曲線を測定したところ,条件によって約2GPaの破断強度と約5%の擬弾性回復ひずみを示すことが明らかになった。
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