研究課題
基盤研究(B)
形状記憶効果を有することが知られるTiNi合金について急速引っ張りに伴う表面皮膜破壊とその再修復過程を電気化学的に観測した。すべり変形機構により塑性変形する通常の金属では、すべりステップの生成にともなう表面皮膜破壊により金属新生面が出現し、アノード溶解が生じる。一方、形状記憶合金では加工誘起マルテンサイト変態により、すべり変形同様に新生面破壊が生じ、金属溶解と不働態皮膜の再生、すなわち再不働態化が生じた。これは、超弾性を示す場合と、MS点以下の形状記憶効果発現の状態でも同様であった。さらに、マルテンサイト逆変態に伴う収縮時でもアノード溶解が生じることがわかり、逆変態時でも皮膜破壊を生じることがわかった。一方、Ti合金等の強固な不働態皮膜を生じる金属合金の被覆として導電性高分子の電解重合を検討した。ポリアニリンの重合はモノマー濃度とともに、ドーパントとなるアニオンの種類とその濃度、下地金属・合金に生じる酸化物皮膜の伝導度と生成する重合膜の伝導度に依存することがわかった。これより、これまで安定に重合ができなかった、TiおよびTiNi合金上でのポリアニリンの生成が可能となった。次に、表面にポリアニリンを電解重合した形状記憶TiNiを急速引っ張りしたところ、被覆量が一定量以上であると数%伸びひずみを与えてもアノード電流の増大はほとんど認められず、柔軟性を持った被覆により荷重負荷時の金属溶解を効果的に抑制できることが明らかとなった。
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