研究概要 |
移植を前提としたヒト細胞の培養において,細胞固定および刺激伝達を可能とする培養面の構築を実施する. グルコース提示型デンドリマー培養面を作成し,培養面表層に呈示されたグルコースと細胞表層のグルコーストランスポータとの関係を解明し,細胞固定,形態制御を試みた.また,本培養面の種々の操作変数にて,細胞の接着,形態,増殖などの細胞特性を評価するとともに,自己集塊培養システムへの適用(細胞形態および極性変化機構を考慮した分化制御面の開発)を目指した.デンドリマー培養面の末端基リガンドとしてD-グルコースを選択し,細胞膜トランスポーターを利用した細胞固定つまりインテグリンを介しない細胞固定を実現した.さらに,種々の操作因子を変化させ,用途の多様性ならびに,対象とする細胞の用途に応じた至適な条件を模索するなど,「培養面特性評価」の基礎的検討を行った.さらに,細胞の固定および形態変化を引き起こす本培養面のメカニズムは,面に提示されたD-グルコースと細胞表層の1型および4型グルコーストランスポータが関与することを明らかとした. 応用研究として,「細胞形態および極性変化機構を考慮した分化制御面の開発」を実施し分化制御を試みた.グルコース提示型デンドリマー面におけるデンドリマー分布密度およびリガンド提示密度などの基礎知見を基に,脱分化細胞の存在しない初代軟骨細胞を用いて形態制御を試みた.また,本培養面にて継代培養を実施し,細胞の形態変化および脱分化状況を把握した.また,ES細胞の集塊形成への展開を試み,未分化能を有することが示唆された.一方,「細胞接着機構を考慮した刺激伝達面の開発」として,細胞への刺激伝達手法において,薬剤をグルコース提示型デンドリマー面に固定することで面からの刺激伝達を試みた.特に,デンドリマーのリガンドとして増殖因子EGFを提示することで,上皮細胞の分裂や運動促進を効率的に行うことが見出された,さらに,本培養面を,上皮細胞シート形成に適用したところ,シート形成を行ううえで重要となる基底層の安定化が見られ,本培養面は,シート形成する上で有効であることがわかった.
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