研究概要 |
中国長江の三峡地区周辺の地すべりを対象とし,その予知に関する研究を行った. まず,長江と黄河の概要,歴史上の被害(洪水,地質災害),および三峡ダムの建設経緯と概要について調べ,三峡地区の地質構造とこれまで発生した深刻な地すべりの誘因について調査した.次に、三峡地区で重大な被害を引き起こした地すべりに関して,現地調査,偏光顕微鏡観察,X線分析顕微鏡の定量分析と室内岩石試験結果に基づき,広域を対象とした地すべりの予測や防止対策の指針に向けて,岩種(泥質砂岩、砂岩、石灰岩)ごとの特徴を調べた. 地すべりにおける寸法効果の検討のため,過去に生じた地すべりを調査して,そのすべった斜面の角度から見かけの摩擦係数をもとめ,摩擦係数と代表寸法の関係を調べた.この寸法効果に時間依存性の効果も加味した,割り増し係数overdesign factorの概念を用いることによって危険度あるいは対策の困難度を表すこととした.この係数はダム建設によって代替地の選定や地すべりの対策に重要や指標となると考える. 岩盤崩壊時に発生する電磁波を観測することにより,地すべりの予知を試みることを目的とし,7種類の岩石を用い室内岩石試験を実施した.その結果,強度の大きく,ぜい性的な岩石ほど発生する電磁波が大きいことが判明した.試験条件に関する検討も行い,載荷速度が大きいほど発生する電磁波が大きくなった.また,応力低下量と電磁波の電界強度の極大値との関係を調べたところ,応力低下量が大きいほど,発生する電界強度が大きくなることがわかった.
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