研究概要 |
相同DNA組換えの要である相同DNA対合は普遍的にRecAやRad51等RecA型蛋白質がATP存在下で行なうといわれている.我々は,Mhr1等一群の原核・真核生物のATPを必要としない相同DNA対合蛋白質群の存在とその新規機能を明らかにしてきた.本研究は,RecA型と非RecA型蛋白質による相同DNA対合反応の機構と機能を比較,解明することで組換え反応の基本を理解する目的で行った.RecA型蛋白質としてRecAを非RecA型蛋白質としてMhr1とRecOを解析し以下の結果を得た. 1.NMR分光法でMhr1またはRecOに結合した一本鎖DNA(ssDNA)が,RecAへ結合したssDNAと共通の立体構造をもつことが分かり,DNAだけに許される糖・塩基間のCH-π相互作用を軸にした相同DNA対合の分子機構の普遍性が確認できた. 2.RecAではLoop1とLoop2について,またMhr1ではFRETによって示唆されたDNA結合部位近くのアミノ酸について一連の変異体を構築して解析した結果,各蛋白質におけるDNA結合部位についての手がかりを得た. 3.知られている機能から,RecA型蛋白質は組換え開始に特化している一方、非RecA型蛋白質は組換え開始とDNA複製開始のいずれにも働くという作業仮説で解析を開始した.期待に反してRecAはDNA合成酵素によるDNA合成を促進したが,RecOは阻害した. 4.生体中のssDNA部分はssDNA結合蛋白質(SSB)で保護されるため,そのまゝではRecA型蛋白質は結合できず,組換えを行えない.一方,RecOは相同DNA対合活性の他,RecAが行う相同DNA組換えでの補助機能が知られている.我々は,RecOはSSB-ssDNA複合体に働き,DNA上でSSBと置き換わることを示す結果を得た. 5.RecO-ssDNA複合体にRecRが働くとRecAのssDNAへの結合が促進されるが、そのときRecOが結合するRecR上の部位を特定した.この結果と4から,新しいRecA結合促進機構モデルを提唱できた.
|