研究概要 |
植物が病原体に対して抵抗性を示す機構,すなわち植物が外敵(病原体)から自己を守るしくみは,現在「植物免疫」と総称されている。PCDや防御反応を制御する分子実体を解明するため,シロイヌナズナ恒常的細胞死活性化変異体cad1(constitutively activated cell death 1)を単離し,その解析を実施した。 cad1変異体では病原体の増殖が1/100以下に抑制されることを明らかにした。このような抵抗性の原因として,サリチル酸シグナル伝達系の活性化が予想された。実際cad1変異体では,内生サリチル酸量が亢進している。しかし,病原体抵抗性に関与するサリチル酸合成系遺伝子SID2の欠損変異体sid2との交配結果は,このような予測を全く覆すものであった。sid2cad1二重変異体における病原性抵抗性は,cad1単独の変異体と全く変わらず,100倍以上の強い抵抗性を示した。また,sid2cad1変異体のサリチル酸量は野生型と同一なレベルにまで低下していた。この事実は,cad1変異体が示す病原体抵抗性反応にはサリチル酸が関係しないことを示している。このようなサリチル酸非依存的抵抗性反応の分子実体の解明のため,抵抗性に関係する様々な変異体との交配実験を進めている。現在,cad1変異体のマイクロアレイによる発現プロファイリングの結果等から,エチレンシグナル伝達系との関係が明らかになってきた。その結果,エチレン応答因子(ERF)遺伝子群のサブファミリーに標的を絞り,欠損変異体や過剰発現体を用いた解析を進めた。これらの実験を進めることにより,サリチル酸非依存性抵抗性の遺伝的ネットワークの詳細を明らかにした。
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