研究課題
基盤研究(B)
狂牛病などで知られるプリオンでは蛋白質の構造変換が自己触媒的に増殖しながら伝搬していく。蛋白質が増殖していくという従来の蛋白質科学の常識ではあり得ない現象がどのようなメカニズムで引き起こされるかを解明することは急務である。本研究では、安全な出芽酵母のプリオン現象をモデルにしてプリオンの伝搬がどのような分子機構で成し遂げられるのかを明らかにすることを目的とする。昨年度までに、試験管内で酵母プリオンタンパク質Sup35の線維成長を全反射蛍光顕微鏡で観察する系を構築(in vitro)、また、細胞内でSup35とGFPの融合タンパク質の動態解析(in vivo)を行った。そこで、最終年度の19年度は、上記の研究を発展させ、研究を総括した。in vitro:前年度までの実験系を拡張することで、酵母プリオンSup35線維の末端にモノマーのSup35が1分子、1分子が付加していくようすを全反射顕微鏡で観察し、その速度論の解析を行った。その解析の結果、Sup35線維の末端において、モノマーSup35が結合したあと、次のモノマーが結合するまでに構造変化が起こることが間接的に示された。これはプリオンに特徴的な構造変換のようすを分子レベルで捉えたとも言える結果である。in vivo:細胞内でのプリオンの実体がオリゴマーレベルの凝集体にあることを昨年度までに明らかにしたので、さらにこのプリオンのオリゴマーの動態を量子ドット技術の応用により詳細に調べた。また、プリオンのオリゴマーが増殖・伝搬するための必須のタンパク質であるHsp104シャペロンがどのように関与するのか、についてSup35GFPの動態を観察することで詳細に解析した。
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