研究課題
基盤研究(B)
ショウジョウバエの視覚中枢構築メカニズムを解析し以下の結果を得た。1.視神経軸索投射を制御するグリア細胞の発生制御にDppが機能することを明らかにした。2.視神経の背腹軸に沿った正確な投射にはDWnt4が必要であることを明らかにした。3.視神経とシナプスを作るラミナ神経は、視神経軸索を正確に認識しラミナカートリッジという構造を作る。このためにはラミナ神経で発現するSim遺伝子の機能が必要であることを見出した。シナプス前細胞が、シナプス後細胞の発生制御を通して回路を形成する新たなメカニズムを明らかにした。4.視神経は眼柄というグリア細胞の筒状の構造を通って脳に投射している。この構造が正常に形成されないと視神経の束状化が阻害されることを見出した。また、その時にFocal adhesion kinase、CdGAPr、インテグリンが機能していることを見出した。5.視覚中枢の1つであるメダラ神経の発生過程では、最外側に位置する神経上皮細胞がProneural遺伝子を発現し、その細胞は神経芽細胞となる。Proneural遺伝子の発現は1細胞ずつ内側へ向かって神経上皮細胞列を上っていく。これは波が動いていくようであり、proneural waveと名付けた。今まで知られている神経芽細胞、神経幹細胞の形成は神経上皮細胞から、proneural遺伝子を誘導する一群のポテンシャルを持った細胞が形成され、その後に「確率論的」に神経幹細胞が誘導される、というものであった。しかしながら、本実験系では「決定論的」に規則正しく進むために今まで詳細が不明であった形成機構を明らかにできると考え、解析を進めた結果、JAK/STATシグナルはproneural waveの進行を負に制御していることが明らかとなった。今後は、waveの進行を正に制御する因子の同定を行いたい。
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