研究概要 |
研究代表者が開発した4'-エチニル-2'-デオキシヌクレオシド誘導体である4'-ethynyl-2'-deoxy-2-fluoroadenosine(1)が,MDRを含む全ての耐性HIVに対して極めて高い抗HIV活性を示すこと,マウス急性毒性が皆無であること,1のトリリン酸体が血漿中での安定性に優れていること及びミトコンドリアDNAポリメラーゼγに対する阻害活性も低いことを明らかにし,画期的抗エイズ薬となりうる可能性を示した。さらに,(1)同薬剤の臨床試験に向けた効率的大量合成法の確立,および,(2)同薬剤のテトラヒドロフラン環部をシクロペンタン環に改変して,更なる安定性および活性の向上,毒性の低減を目指した新規炭素環型類縁体(2)の合成法の開発について研究を実施した。(1)については,容易に入手可能な4-pentenoicacidのL-phenylalaninol誘導体の不斉酸化を経由して調製したα-シロキシアセチレンケトンに対する立体選択的Clユニットの求核付加を鍵反応とする1の効率的合成経路(全9工程)を発案し,最後のステップである2-フルオロアデニンによるN-グリコシル化を残すのみの段階まで達している。また,(2)については,グアニン誘導体を除く全ての4'-エチニル-2'-デオキシヌクレオシド炭素環アナログの合成に成功するとともに,2-フルオロァデニンを有する炭素環アナロクについては,より短工程の合成ルートの開発研究を実施し,2-フルオロアデニンを結合させるステップを残すのみとなっている。
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