配分額 *注記 |
10,000千円 (直接経費: 9,400千円、間接経費: 600千円)
2007年度: 2,600千円 (直接経費: 2,000千円、間接経費: 600千円)
2006年度: 2,300千円 (直接経費: 2,300千円)
2005年度: 5,100千円 (直接経費: 5,100千円)
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研究概要 |
樹冠層に大量のリターを保持するスギにおいて,菌類・枯死有機物に依存する代表的な土壌節足動物のトビムシに着目し,土壌層に生息する一群との比較を通じて,樹上の'懸垂土壌'での時空間構造と生活史を明らかにした.スギ樹冠層のトビムシ群集は,土壌層からの移動によって供給される種と,樹上のみを利用する種によって構成され,種ごとに時間的・空間的に異なる分布様式を示していた.樹冠・土壌両層における節足動物群集の空間分布構造とその経時変化,リター動態から,腐食連鎖系の中核をなすこれらの動物群が,樹上環境にも適応することによって,森林の垂直構造を効率的に利用していることを明らかにした.付着リターがもたらす樹上の複雑な空間構造と豊富な資源量が,腐食性動物の生息環境を多様にし,さらに,土壌と樹上間の移動が樹上の群集形成に大きな影響を及ぼすことが示された. また,亜熱帯林の着生シダ(オオタニワタリ;以下,シダ)内に堆積しているリターの特性を明らかにし,この'懸垂土壌'内に形成されるササラダニ群集の構造との関連を解析した.すなわち,シダ着生の有無によるササラダニ群集の種数を比較し,シダの存在が森林全体のササラダニ群集の種多様性に及ぼす影響を明らかにした.イタジイ林全体のササラダニ種数は,シダの有無だけでは大きくは変化しなかった.しかし,この着生シダの存在は,その環境に特異的な種の生息を可能にしていたため,亜熱帯林における多様性維持機能において重要な役割を果たしている可能性があることが強く示唆された. これらの成果は,森林の構造的多様性が分解系生物群集に及ぼす影響を明らかにしたものであり,土壌動物が森林の垂直的階層構造を利用して多様な群集を成立させていることが,森林や基質の違いによらず普遍性を持つことが初めて示された.
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