研究概要 |
本研究では,ポルフェノールオキシダーゼ(PPO)のホモログであるオーロン合成酵素(AS)のキンギョソウ花弁細胞内での細胞内局在性や輸送経路を明らかにし,オーロンを代謝工学的に合成するたあの基盤を構築した.密度勾配遠心によるキンギョソウ花弁細胞オルガネラの分画実験や,オワンクラゲの緑色蛍光蛋白質(GFP)と酵素前駆体中の推定シグナル配列との融合蛋白質をコードする遺伝子を用いたトランジエントアッセイにより,ASが液胞局在性であることを明らかにした.これまでに知られているPPOは例外なくプラスチド(葉緑体)に局在することから,本酵素の細胞内局在性はPP0としては極めてユニークなものである.また,酵素前駆体のN末端に液胞輸送シグナルがコードされていることを示すとともに,この配列中に既知の植物液胞輸送シグナルの条件を満足する配列(N^<48>SLAY^<53>)を見いだし,その機能を変異解析により評価した.また,N末端推定シグナル配列とGFPの融合蛋白質遺伝子を,ドミナントネガティブ型のAtSarIミュータントと共発現させてトランジエントアッセイを行うことにより,この酵素前駆体が小胞体からゴルジ体を経由して液胞に運ばれることを明らかにした.さらにN末端推定シグナル配列のミュータントを用いたトランジエントアッセイにより,本酵素前駆体がmultivesicula body pathwayを経由して液胞に運ばれることに関する証拠を得ることができた.こうした知見に基づいて,フラボノイド生合成経路の代謝工学的制御によりオーロンを花弁に蓄積させる技術を確立した.本研究において明らかにしたASの細胞内局在性やその輸送経路は,ASを用いて代謝工学的にオーロンを合成するための重要な基盤を提供することができた.
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