研究課題
基盤研究(B)
FLIPはCaspase8とよく似た構造を持つがCaspase活性を持たないため、Caspase8と競合することによりアポトーシスを阻害する。FLIPはアポトーシスを阻害する以外に、b-cateninのユビキチン化を阻害することによりWntシグナルを増強する。この分子機構を詳細に解析した結果、以下のことを明らかにした。1,FLIPはb-cateninだけでなくHIF1a、XIAP、GFP-degronなど様々なタンパク質のユビキチン化を阻害し、これらタンパク質の細胞内蓄積を増加させた。FLIPのユビキチン化阻害活性は、FHPタンパク質が細胞内で凝集塊を形成する性質と密接な相関があり、これらの性質にはFHPのDEDドメインが重要であることがわかった。FLIPを多量に発現している肺がん細胞では大部分のFLIPタンパク質が界面活性剤で可溶化できず、免疫染色により肌IPタンパク質が細胞内で小さな凝集塊を形成していることが示された。この細胞でsiRNAによりFHPの発現量を低下させると、Wntシグナル、HIF-1シグナルいずれも低下した。2,FHPタンパク質のC末に核移行シグナルが存在し、FLIPはCRM1依存的に核と細胞質をシャトルしていることを明らかにした。FLIPのC末42アミノ酸を欠損させたFHP変異体、あるいはFHPの核移行シグナルに変異を導入したFHP変異体は、b-cateninの蓄積増加を起こすが、Wntシグナルの増強活性を示さなかった。またこれらのFLIP変異体は主に細胞質に存在し、核移行活性が著しく低下した。FLIPタンパク質に核外移行シグナル配列を付加すると、FLIPタンパク質の大部分が細胞質に局在し、Wntシグナル増強活性が著しく低下した。これらの結果から、核内に存在するFLIPはWntシグナル活性化に関与する事が示唆された。
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