研究課題
基盤研究(B)
生活習慣病の克服には、脂肪細胞肥大化の研究と並び、脂肪細胞分化機構の解明も重要な課題である。我々は、すでに脂肪細胞分化の最も初期において発現が変動する遺伝子群を多数単離し、これらが脂肪細胞分化に重要な役割を果たしていることを明らかにしてきた。本研究では、データベースに登録のない未知遺伝子群をfad(factor for adipocyte differentiation)と名付けこれらを中心に機能解析をし、以下の結果を得た。 1.分化の最も初期において必須とされるclonal expansionに対する各種因子の影響を検討したところ、fad24およびfad104が重要な役割を果たしていることを明らかとした。 2.fad104のホモノックアウトマウスを作製したところ、生後1日以内に死亡することが明らかとなったため、MEFを用いて脂肪細胞分化に対する影響を検討したところ、fad104は分化のみならず、接着や細胞移動にも重要な新規遺伝子であることを明らかにした。 3.新たに新規遺伝子として単離したfad49は、脂肪細胞分化に重要な役割を果たしていることを明らかとした。特に、fad49は脂肪細胞分化の初期においてスキャフォールド機能を有し、種々のシグナノ伝達ネットワークに密接に関与している可能性が強く示唆された。 4.インプリンティング遺伝子である peg10(paternally expressed gene 10)を新たに同定し、脂肪細胞分化を正に制御することを明らかとした。 5.cyclin Dはclonal expansionの制御を介して、脂肪細胞分化を制御する可能性が考えられた。以上、脂肪細胞分化の初期に機能し重要な役割を果たすと考えられる因子群を多数分離同定解析した。今後さらに詳細な解析を行うことにより、新たな治療薬開発への足掛かりとなることが期待される。
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