研究概要 |
従来,脂質滴は過剰な脂質をエステルとして貯蔵するための静的なコンパートメントであると考えられてきた.しかし我々の研究などにより,脂質滴が種々の細胞機能により積極的に関与するオルガネラであることが明らかになってきた.今回の研究により以下の成果を得た. 1)脂質滴の質量分析で同定したRab18は脂質滴に特異的に局在した.Rab18を過剰発現させるとADRPが脂質滴から脱落し,脂質滴と小胞体の密着構造の顕著な増加が認められた.同様の構造はADRPのノックダウン,BrefeldinA処理でも認められた.これらの結果より,Rab18はADRPの脂質滴局在を減少させることにより,脂質滴と小胞体の密着構造(LD-associated membrane)形成を誘導することが示唆された. 2)Huh7,HepG2など肝細胞由来株において,ApoBが脂質滴周囲に半月状の構造(ApoB-crescent)を形成することを見出した.ApoB-crescentはproteasomeまたはautophagyを阻害すると著明に増加した.脂質滴周囲にはproteasomeのサブユニットの集中が認められ,脂質滴画分に回収されるApoBはユビキチン化を受けていた.これらの結果は,ApoBがproteasome, autophagyで処理される際に脂質滴がプラットフォームとしての役割を果たすことを示した. 3)PAT蛋白質の一つであるTIP47は,細胞に脂肪酸などを負荷すると急速に脂質滴にリクルートされた.脂質滴への局在にはTIP47のN末が必須であり,また疎水性ポケットを形成すると予測されるC末部分を変異させると刺激なしでも脂質滴への局在が認められるようになった. これらの結果は脂質滴が細胞内の脂質ホメオスタシスに関する多彩な機能を担う可能性を明らかにした.
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