研究課題
基盤研究(B)
消化管粘膜上皮再生に重要なHGFの活性化酵素とそのインヒビターHAI-1の機能と意義に関する検討、研究の程で見出した新規蛋白H2RSPの機能解析、そして重要な細胞増殖因子であるinsulin-lke growth factorの調節因IGFBP-2の機能解析を行った。HGFは傷害組織で活性型へ変換される。活性化酵素としてこれまでにHGF activator(HGFA)、matriptase、hepsiが同定されている。HGFAノックアウト(KO)マウス解析から、HGFAが傷害腸管上皮の初期再生に重要であること、また肺胞組織の修復、Bリンパ球分化および腫瘍細胞の浸潤性増殖においても重要であることも明らかにした。更にHGFA前駆体を活性化する酵素として新たにtissue kallikrein 5(KLK5)とKLK4を同定した。HGF活性化酵素によるHGF活性化は膜結合インヒビターHAI-1による調節を受けており、消化管上皮に強く発現している。HAI-1機能解明のためにKOマウスを作成したが、胎盤形成不全により胎生致死であった。そこで口盤をレスキューしたKOマウスの作成を試みた。胎盤レスキューによりHAI-1 KOマウスは出生したが、生後約週間で致死となった。新生仔の解析を詳細に行い、HAI-1が皮膚の発達と恒常性維持において極めて重要な蛋白質であることを明らかにした。また消化管特異的コンディショナルKOマウス作成に着手した。我々が新たに見出した蛋白質H2RSPは消化管上皮に強く発現し、分化に伴って核に移行する蛋白質であった。本蛋白は大腸癌においては発現が低下するにも関わらず、強い間質浸潤を示す癌細胞では逆に強発現しており、その際には細胞質内にとどまる傾向を示し、発現と転移との間に相関を見出した。また、IGFBP2の機能について検討を行い、本蛋白が細胞の浸潤能に関与することを示し、その機能の担い手の1つとして、CD24を見出した。
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