配分額 *注記 |
16,170千円 (直接経費: 15,300千円、間接経費: 870千円)
2007年度: 3,770千円 (直接経費: 2,900千円、間接経費: 870千円)
2006年度: 3,900千円 (直接経費: 3,900千円)
2005年度: 8,500千円 (直接経費: 8,500千円)
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研究概要 |
本研究では釣藤散をはじめとする漢方薬の脳虚血病態動物における学習記憶改善効果を利用して脳虚血処置と漢方薬投与の操作に対して相反性に発現変化する脳内因子の探索同定と、その脳内生理機能の解析により脳血管性痴呆の治療に資する標的分子を開発することを目的とする。この目的で脳血管性認知障害症患者に対して有効性が報告されている漢方薬釣藤散(CTS)を主に用いた。両側総頸動脈を永久結紮した慢性脳虚血(P2VO)モデル動物を用いてP2VO処置後からCTS投与を開始し,P2VO動物に発現する学習記憶障害や脳内遺伝子発現等を指標にCTSの影響を検討した。その結果,以下の知見を見出すことができた。P2VO動物では対照動物と比べて空間的及び非空間的学習記憶に顕著な障害が認められ,CTS及びコリンエステラーゼ阻害薬タクリン投与により改善された。一方,CTSとは適用疾患が全く異なる柴胡桂枝湯は無効であったことから,改善効果はCTSに特徴的作用であることが推測された。学習記憶に重要なコリン神経系のマーカー遺伝子を指標に精査した結果,P2VO動物ではコリン神経系機能が低下しており,それはCTS投与で回復することが判明した。これらからCTSの効果にアセチルコリン合成酵素やムスカリン性受容体の遺伝子発現系が関与する可能性が示された。脳内遺伝子をDNAアレイ解析した結果,P2VOで発現変化する遺伝子の一つとしてマクロファージコロニー刺激因子(MCSF)、を見出した。さらにCTS投与はPKC系を介してMCSF遺伝子発現を上昇させることを明らかにした。MCSFは虚血や外傷による神経損傷に対して抑制的に働き,コリン神経系に対して栄養性効果を持つことが示唆されていることから、脳血管性認知症に対するCTSの臨床的有効性にもこの作用が一部,関与することを示唆した。
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