研究概要 |
心筋梗塞関連遺伝子であるリンフォトキシンアルファ(LTA),およびガレクチン-2の細胞内カスケードの解明を目的として、これらに相互作用するタンパク質の同定を行い、それらの機能解析を進めてきた。方法としては主に,Tandem affinity purification (TAP)法を用い,冠動脈血管内皮,平滑筋細胞、HeLa細胞を材料として進めてきた。質量分析による検索の結果、ガレクチン-2の結合候補分子として,トールライクレセプター(TLR)やMAPキナーゼの一つであるmitogen-activated protein kinase kinase kinase 7 (MAP3K7)といった細胞膜タンパクや炎症性物質のシグナル伝達に関連する分子群を同定してきた。免疫沈降法を用いた結合の再確認によって、TLR1,TLR2がガレクチン-2と実際に結合することを同定している。また、MAP3K7についてもガレクチン-2と結合することを確認し、さらにこれらの共発現系を用いた細胞免疫染色においても細胞内共局在を確認した。また,MAP3K7を冠動脈血管内皮細胞でsiRNAを用いてノックダウンすると、炎症系シグナルの中心的な転写因子NFkBの活性が低下することをNFkBに特異的なプロモーターにレポータ遺伝子をつないだ系においても確認している。ガレクチン-2はLTAの細胞内輸送に関わっている可能性が報告されており、今回同定した炎症関連分子もガレクチン-2がこれらの細胞内輸送を制御し炎症性シグナルを調節すると考えられる。また、LTAの炎症シグナルはMAP3K7を介することが知られており、結果的にLTAとガレクチン-2の量的な変化が炎症シグナルの変化に強く寄与して心筋梗塞の発症、進展に関連することが示唆される。
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