研究概要 |
本研究の主題は、イノシトール代謝と精神疾患の病理回路を解明するアプローチの一つとして、精神疾患関連遺伝子としてのイノシトールリン酸代謝酵素遺伝子改変マウスを作製し、その表現型を探ることを目的の一つとした。本研究ではイノシトールモノリン酸を脱リン酸化する酵素(IMPase ; myo-inositol monophosphatase)に注目して、系統的に遺伝子改変モデルマウスの作出することに成功した。具体的にはImpa1トランスジェニックマウス、Impa2トランスジェニックマウス、Impa1ENU(ethyl-nitroso-urea)誘導変異導入マウス、さらにはImpa2ノックアウトマウスを作製することに成功した。Impa2トランスジェニックマウスの表現型の一つとして不安様行動の亢進を示すことから、本トランスジェニックマウスは精神疾患の病態生理とイノシトール代謝の関連を個体レベルで探るために有用なモデルマウスとなり得ると考えられた。これら遺伝子改変動物の表現型については現在鋭意論文作成中である。平行して行った日本人躁うつ病患者におけるIMPA2の関連解析においては、プロモーター領域に有意な関連を示すSNP/ハプロタイプを発見した。リスクSNPは転写活性を上昇させて、躁うつ病の発症リスク上昇に関与する可能性が推測された(ohnishi et al.,Neuropsychopharmacology, in press)。また長らく不明であったIMPA2タンパク質の生化学特性および結晶構造を世界に先駆けて明らかにした(Ohnishi et al.,J.Biol.Chem.282,637-,2007 ; Arai et al., Proteins 67,732-,2007)。その他、関連する報告を多数行った。
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