研究概要 |
既存の粒子線がん治療装置は,20世紀に開発された加速器技術により建設されて利用に供されている。そのため装置全体が大型化かつ複雑化しているのが現状である。2000年代初めに開発された最新の加速器技術である,直接プラズマ入射法(Direct Plasma Injection Scheme)とドリフトチューブ線形加速器におけるAPF(Alternating Phase Focusing)法を積極的にがん治療装置に取り入れ,その入射線形加速器への利用を試みた。 直接プラズマ入射型レーザーイオン源について,気体と固体をターゲットとした場合の開発研究をおこなった。YAGレーザーとクライオクーラーの組み合わせにより良好な結果が得られたため,各種の国際ジャーナル誌および国際会議で報告した。また,既存の2MeV/u重イオン加速試験用APF-IH線形加速器を利用して,直接プラズマ入射法による実験を試みた。軌道計算を詳細におこなうと,加速アクセプタンスを高くするには大きな改造を必要とすることが分かったが,予算の関係で小改造にとどめた。直接プラズマ入射法の利用によって入射エネルギーが低い場合,APF-IH収束による大強度加速では大きなアクセプタンスを期待出来ないことを明らかにした。その改善策として,低エネルギー領域での入射加速に優れたRFQ型と,中エネルギー領域での加速に優れたAPF収束ドリフトチューブ型の2つの加速構造を1台のIH(Interdigital H)空洞に挿入する新しい線形加速器を考案した。この複合加速構造型単一IH空洞線形加速器について,各種の国際ジャーナル誌および国際会議で報告した。
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