研究課題
基盤研究(B)
本研究では、我々がこれまで生体肝移植で行ってきた研究実績を生体膵臓移植にも応用しつつ、新たなより良い治療法を模索することである。まず新潟大学では新たな先進医療の実施ということで、膵臓移植のマニュアルを作成し倫理委員会で承認された後、脳死生体問わず膵臓移植の世界の第一人者であるミネソタ大学Sutherland教授のアドバイスも得ながら、次に述べる研究目的に向って検討した。(1)より生理的な手術術式の開発(2)ドナー抗原門脈内投与によるステロイドフリーレジメの開発(3)膵臓移植における新たな免疫抑制療法の免疫学的解析。(1)より生理的な手術術式の開発:我が国では通常の生体膵臓移植においては膵液のドレナージ法が、拒絶反応の診断のため、さらには膵液漏れ合併症の回避のため全例膀胱吻合で行われていた。しかしより生理的吻合は腸管吻合であり、脳死移植においては腸管ドレナージが主流になってきており、今回の生体膵臓移植は本邦では初となる腸管ドレナージを選択した。さらに静脈ドレナージ法は体循環へのドレナージが全例生体膵臓移植では行われていたが、合併症のない生体単独膵臓移植では、必要インスリン量が多い事からインスリン離脱の為にはより生理的な門脈ドレナージが良い可能性が考慮される。我々は2例目において同所性膵臓移植を行い門脈ドレナージを開発施行した。(2・3)ドナー抗原門脈内投与によるステロイドフリーレジメの開発。世界で初めてとなるドナー抗原門脈内投与は、分離ドナー抗原投与を問題なく行う事ができた。さらに導入免疫抑制剤としてサイモグロブリン投与した。また維持免疫抑制剤としてはプログラフとセルセプトの2剤を使用した膵臓移植における新たな免疫抑制療法の免疫学的解析:免疫学的解析では、サイトカイン産生ではIL-10が1週間目で高値となっており、IL-2,IFNγは完全に抑制されていた。フローサイトメトリークロスマッチ解析では、CD3+IgMが1週間をピークに抑制されており、Th-2タイプが活性化しており、生体肝移植と同様の結果がでている。拒絶反応もなく経過しており、我々の新しい免疫抑制療法は、生体膵臓移植にとって有効な方法と成る可能性が示唆された。本研究を基礎として今後臨床症例を重ねるとともに、臨床的、基礎的解析を進め世界に発信していきたい。
すべて 2008 2007
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (2件)
Transplantation Proc 40
ページ: 486-490
Transplant Proc 40(2)
ページ: 486-90