研究課題
基盤研究(B)
平成17年度には、ノルエピネフリン、アンギオテンシンII、バソプレシンのヒト血管平滑筋に及ぼす影響を検討した。具体的には、ショック患者において血管収縮性ホルモンの変化を測定し、またin vitroの実験として各種ホルモンのヒト血管(胃大網動脈)に及ぼす影響を検討した。結論として、ヒト血管において生体濃度のアンギオテンシンII、バソブレシンは強い血管収縮反応を呈した。しかし、アンギオテンシンIIはtachyphylaxis反応を生じ収縮力の減弱を生じるのに対し、他のホルモンとの相互作用により収縮力が改善した。血管収縮性ホルモンは、生体内で相補関係を持ち、血管反応性を維持している可能性が示唆された。平成18年度には、冠動脈バイパス手術におけるUltrasonic skeletonization法とpedicle harvesting法で採取された内胸動脈(ITA)グラフトおよび胃大網動脈(GEA)グラフトの血管反応性を検討した結果として、KCL、ノルアドレナリンによる収縮とジルチアゼム、亜硝酸イソゾルビドによる拡張はskeletonize、pedicle間で有意差は無かったことから血管平滑筋機能はよく温存されていると考えられた。一方で、アセチルコリンでpedicled graftがskeletonized graftよりも有意に弛緩したことからultrasonic skeletonizationでは内皮機能障害があることが示唆された。以上より、ultrasonic skeletonizationによる採取時には血管への接触を最小限にするための細心の注意を要し、亜硝酸薬、カルシウム拮抗薬の術後投与はgraft hypoperfusionのリスクを軽減させると考えられた。平成19年度には、冠動脈バイパスグラフト術で使用された胃大網動脈(GEA)の余剰遠位端を用いてアンギオテンシンIIの血管反応性を検討した。結果において、アンギオテンシンIIはヒト胃大網動脈を強力に収縮させるが、急速にtachyphylaxisを生じ収縮力は減弱する。また、その収縮反応の改善にはアラキドン代謝系が関与している可能性が示唆された。
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