研究概要 |
本科研費研究の目的は、「びん東語福寧方言群に属する中国福建省(1)周寧県咸村鎮方言、(2)寧徳市方言、(3)柘栄県方言の現地調査を行い、その調査データを研究者が利用しやすい形に整理した・提示した《びん東語福寧方言研究》を研究期間内に完成させる」であった。三年間の研究期間中、周寧県咸村方言、寧徳市虎貝方言、寧徳市九都方言、福安市穆陽方言の調査を行った。本研究課題の最大の目的は、音節末子音韻尾-p,-t,-k,-?/-m,-n,-ηを保存するびん東区方言(例えば咸村方言では「三」θam^1≠「生」θaη^1≠「生」θaη^1)を調査し、その調査報告を中国語で執筆し公表することであった。ただし、咸村方言、虎貝方言、九都方言ともi,y,eなど開口度の狭い主母音に後続する場合にはこれらの子音がきわめて不安定であった。Jerry Norman教授が1977-78年に発表したデータでは、柘栄方言にもこれらの子音が保存されている。ところが、今次私が行った調査では柘栄方言ではこれらの子音が-?/-ηへと合流していた。福安市穆陽方言を調査したところ、形態音韻論的にこれらの子音の痕跡が認められたため、調査地点を柘栄から福安市穆陽に変更した。この点以外はおおむね当初の計画通りに調査を進めることができた。調査報告に関しては音系(音韻特徴以外)、字音対照(1000字)、語彙対照(600語)、例句対照(100例句)の部分はほぼ完成した。これらの部分については、研究成果報告書に公表する。概説部分等を未完成部分を早急に完成させ、来年度中にできれば中国で正式出版したいと考えている。
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