研究概要 |
フランスでは,教育省管轄の小中学校への特別な支援体制において,厚生省系特殊教育施設,あるいは親の会の団体が大きな役割を演ずる場合のあることが確認されている。このシステムは,S.E.S.S.A.D.(地域の学校におけるケアと特殊教育サービス:Services d' education specialisee et de soin adomicile)と呼ばれ,厚生省系の治療教育施設が,教育省管轄である通常の学級において障害のある児童生徒への支援を提供するユニークな制度である。本研究では,UNAPEI(Union Nationale des Associations de Parents et Amis de Personnes Handicape'es Mentales)の協力を得て,SESSADと関連する特殊教育セクターの実地調査を行った。SESSADは,医師,特殊教育指導員(educateurs specialises),精神運動訓練士(psychomotricien),言語聴覚士などの多職種の専門家によるサービスを持つことに加えて,生活のさまざまな場所で介入をする運用の柔軟性のために,その数が拡大していること,実際に利用している一番多い年齢が6歳から10歳で4割程度を占めており,子供のニーズと教育者のニーズと両方に応えている現状が明らかになった。その一方で,安易な部分的統合教育の手段になっている現状などの問題点のあることが伺われた。「全ての障害のある子どもが,居住地に最も近い学校に登録されるべきこと」を規定した障害者の機会均等と社会への平等参加のための2005年2月法(Loi n^o 2005-102 du 11 fevrier 2005)施行後の実態,学校生活介助者(A.V.S.:Les auxiliares de vie scolaire)の導入による専門性の低下など,新たな課題も明らかになった。
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