研究概要 |
本研究の目標は,不確実性を内包する計算問題,つまり解の最適性や入力情報などに不確実性をともなう計算問題にも対応しうるアルゴリズム理論の構築に貢献することであり,中核となる系統的設計法に関して解決をせまられる諸問題の中から,代表的緩和手法である線形計画緩和と半正定値計画緩和に関する,主要未解決テーマに取り組むことである。得られた主な研究成果は以下の通りである。 ・集合被覆問題:与えられた部分集合の位数がいずれもk以下であるとき,それをk集合被覆問題と呼ぶが,同問題に対しては,一様コストの場合にH(k)-1/2の近似保証が示されている。一方,一般コストの場合や,集合多重被覆問題の場合には,貪欲法のH(k)を改善できるか否かは未解決問題として残されていた。ここでH(k)は,k番目の調和数を表す。本研究では, 1.重みつき3-集合被覆問題に対しする貪欲法を改良し,与えられた重みにある一定の開きがある場合,同問題に対し近似度H(k)-1/6を多項式時間内に保証できることを示した。 2.集合多重被覆問題にに対し近似度H(k)-1/6を多項式時間内に保証できることを示した。 ・グラフの木状被覆問題:同問題に対し,一様コストの場合に2倍近似保証アルゴリズムが知られているが,一般コストの場合の近似保証は3+εであった。 1.ます,2倍以上の開きがある2種類のコストのみが許されているグラフの木状被覆問題について検討し,主双対法に基づく2倍近似アルゴリズムを開発した。 2.主双対法と局所比原理を組み合わせることで,最小全域木に枝刈りを施すというアプローチにより,2倍近似保証を得ることに成功した。
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