研究概要 |
本研究では,スパース信号分解の画像処理応用を目的とし,多チャネル信号へのスパース信号分解の拡張,複数の性質が異なる信号が重畳した信号のスパース信号分解によるモデル化,また信号構造に着目した信号分解法について研究を行った.多チャネル信号へのスパース信号分解の拡張では,カラー画像を対象として,その画像処理への応用を提案した.一般にスパース信号分解では,信号を表現する基底は,統計的に独立であり,優ガウス性の確率密度関数に従って発生することを仮定する.それに対して,カラー画像等では,信号チャネル間では強い相関を持ち,同一の座標で異なるチャネルに対応する基底の展開係数に独立性は仮定できない.そこで,従来のスパース信号分解に対してチャネル間での展開係数の独立性の条件を緩和した分解法を提案した.また,提案法が雑音除去応用において,従来のスパース信号分解よりも優れた雑音除去能力を有することを示した. 以上の雑音除去の応用では,画像エッジを画像特徴としてウェーブレット基底により捉えることが基本となっている.しかしながら,画像中にはエッジ等に代表される突発的な要素だけでなく,周期性を有するテクスチャ成分等も現れる,これらを,それぞれ異なった基底で分解し,成分毎に分離するために,本研究では1次元信号を対象として周波数領域で局在する信号と時間領域で局在する信号を分離する方法を提案した.具体例として,音声信号に突発性の雑音が重畳した信号から,突発性雑音と音声信号を分離する方法を示した. また,画像に現れるテクスチャ成分は,周期性を持つ信号要素である.周期信号のスパース表現法として,新たにスパース周期信号分解法を提案し,複数の周期信号の混合信号から,それぞれの周期信号の波形と周期を同時に推定する方法を提案した.提案法は信号源のスパース性の仮定から,従来の周期分解法よりも高い精度で信号周期を推定し,信号分離を実現できることを示した.
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