研究概要 |
現在の動画像処理研究では,画像処理アルゴリズムの計算複雑性の低減に労力を費やすのでなく,コンピュータの高速化で問題を乗り切ろうという「物量作戦型画像処理」のトレンドが大きくなりつつある.ごく単純な脳神経系しか持たない昆虫が,リアルタイムで画像情報を処理しながら空中を飛び回っていることを考えれば,本来,動画像処理アルゴリズムは,もっと単純であるべきではないかとの問題提起が画像処理研究の場でなされないのは不思議である.この研究では,昆虫の視覚情報処理や低解像度である複眼視に基づいたリアルタイム動画像処理(具体的には動き認識)が可能となるアルゴリズムの基礎的な検討を行うのが目的である. そのようなアルゴリズムを実現するために,遅延動作比較検出器と呼ばれるElementary Moition Detector(略してEMD)およびElaborated Reichardt Detector(略して ERD)を信号処理の立場から理論的に分析し,これら遅延動作比較検出器を基にした動き認識アルゴリズムを検討した. その結果,(i)動き検出結果は遅延動作比較検出器を構成する各種フィルタパラメータの設定値により影響され,(ii)これらパラメータを最適化することにより検出精度を向上されることが可能であり,(iii)最適化は解析的および数値処理的に可能であることが分かった.また,EMDおよびERDをベースとする動き検出アルゴリズムは,低解像度のビデオ入力に対して動きを検出することが可能であり,その低計算複雑性と相まってリアルタイムで動作することを検証できた.
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