研究概要 |
本研究では,マルチチャンネル・ビジョンシステムの技法と各種ビジョン問題への応用を検討した.マルチチャンネル・ビジョンシステムは,RGBの3チャンネルに固定したシステムと異なり,400-700nmの可視域に4つ以上のチャンネル数を有するシステムである.これによりいくつかのビジョン問題の解決につながる.まずカメラ系の色分解能を大きく改善することができる.次に照明光の分光エネルギー分布や物体表面の分光反射率といった分光関数の推定が容易になる.マルチチャネル撮像系の基本構成は狭帯域フィルタ,モノクロディジタルカメラ,パソコンからなる. 本研究では,まずマルチチャンネル撮像系と分光情報を推定するアルゴリズムを開発した.次に物体の3次元反射特性の計測と推定のためのシステムを開発した.さらにマルチチャンネル・ビジョンシステムを下記のような具体的な問題に適用した. (1)物体の識別を検討した.まずスペルトル色を用いた物体識別法を提案した.次にプリント回路基板上の材質の識別法を開発した. (2)蛍光灯を含む光源分光分布の計測と推定の方法を検討した.蛍光灯分光分布は輝線の波長に基づいて分類でき,これより蛍光灯を推定できることがわかった. (3)皮膚を半透明の混濁物質層の重なりとみなして,Kubelka-Munk理論を用いて表面分光反射率を推定し,それに基づいて皮膚画像を生成する手法を開発した. (4)ディジタルアーカイブでは,マルチチャンネルシステムで反射モデルパラメータを推定し,任意の照明環境と観測視点で画像のレンダリングを行う手法を開発した. (5)鏡面球に映り込んだ像を画像計測して,全方位の光源の空間分布と分光分布を推定する方法を開発した.
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