研究概要 |
本研究計画は,量子力学的ゆらぎ取り込んだベイジアンネットシステムの設計理論の基盤の整備を行い,実用化への可能性を探ることを目的とするものであり,近年,研究の活発化している量子情報処理を量子確率推論へと発展させる試みである.平成17年度は主として従来のベイジアンネットワークアルゴリズムに量子力学的効果を組み込む理論的定式化についての検討を行い,「確率推論を定式化する枠組みとしてのベイズ統計の量子力学的確率推論への拡張」の部分についてほぼ当初の目的を達成した.統計力学における量子確率場に対するクラスター変分法の理論的再検討を行い,これを量子確率伝搬法として拡張し,具体的な量子ベイジアンネットワークとして定式化する理論的基盤整備を行った.その際,従来のベイジアンネットワークで可能であったメッセージ更新規則が量子確率場の導入により量子ベイジアンネットワークとして具体的にどのような変更が必要となるかについて明らかにした.平成18年度は平成17年度の研究成果を受けて具体的な確率推論システムに対する量子力学的確率伝搬法のアルゴリズムを構成し,収束性を確認し,同時に従来の確率伝搬法との数理構造の違いの明確化を行った.その成果の一部は科研費特定領域研究「情報統計力学の深化と展開」平成18年度研究成果発表会(2006年12月)および日本物理学会2007年春期大会領域11シンポジウム「量子系におけるコトの物理学」(2007年3月)においてそれぞれ公開している.更に,量子ベイジアンネットワークの数理構造の基礎として,確率モデルにおけるプレフカ展開とクラスター変分法の関係についての一般的な解釈を与えた.同時に情報処理におけるスケールフリー性を伴うネットワークの生成メカニズムの数理的解析を行った.以上の研究成果をもとに量子ベイジアンネットワーク設計理論の基盤整備を進めた.
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