研究課題
基盤研究(C)
2005年度の研究成果の概要「(等間隔リニアアレイを用いた)高分解能到来方向分布推定問題」(任意に指定された方位区間から到来する信号の数を推定する問題)は、無線通信、音声・音響・超音波処理、地震波工学、レーダ工学、医用工学などに多くの応用を持っている。従来の「到来方向分布推定問題」は、いずれも、これらの解の逐次近似解を指定された区間で数え上げる方針に基づいており、本来「到来方向分布推定問題」に要求されない「全ての信号の到来方向の推定」に大半の計算コストが費やされていた。本研究では、「到来方向値の推定」を回避することにより、「任意に指定された方位区間から到来する信号数」を有限回の四則演算で、直接推定可能とする2つの「代数的高分解能到来方向分布推定法」の開発に成功している。2つの推定法は、いずれも「代数的連続位相復元法(Yamada et al.'98 & '02)」の拡張を利用したものである。実際に、2つの提案手法に対し、ゼロ書き換えに基づいた精度保証付き区間演算法(Shirayanagi & Sekigawa '97)を組み合わせ、スツルム列生成アルゴリズムの引き起こす係数爆発の問題を回避しながら、数値安定化するアルゴリズムを計算機上に実装し、実際に10^{-8}度の方位区間幅が指定された到来方向分布推定が厳密に算出できることを数値例で確認している。2006年度の研究成果の概要到来方向分布情報は、情報通信システムを支える多くの信号処理技術に利用することができる。効果的な利用法を探るために本プロジェクトの後半では、「(a)適応射影劣勾配法の機能の一般化と応用に関する研究」、「(b)無線通信ネットワークのための高速分散電力制御法に関する研究」、「(c)直交時空間ブロック符号化を用いたMIMO通信システムへの応用」、「(d)ステレオ音響エコー消去システムへの応用に関する研究」を併せて検討し、大きな成果を得ている。例えば、(c)では、多元接続干渉の高速な抑圧を実現する適応受信機を提案している。この受信機は、適応射影劣勾配法を用いて複数の観測情報を同時に利用することにより干渉抑圧フィルタの優れた収束性能を実現しており、従来の多元接続干渉適応抑圧法に比べて遥かに小さなビット誤り率を達成することに成功している。なお、適応射影劣勾配法は大きな注目を集めており、CDMAへの応用では、電子情報通信学会論文賞を受賞している。また、IEEE ISCAS 2006(Greece)の招待講演論文に選定された他、IEEE ICASSP 2007のチュートリアルレクチャー、IEEE ICICS2007のチュートリアルレクチャーでも講演を依頼されている。IEEE Signal Processing Magazineからは解説論文を依頼されている。(注:他にも本研究課題を核にして応用は多岐に広がっている。研究発表欄をご参照ください。)
すべて 2006 2005
すべて 雑誌論文 (17件)
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