研究概要 |
本研究では交通における車両挙動に,運転者の心理バイアスをモデル化して組み込むことについての基礎的研究を目的としている.運転者の心理バイアスをモデル化するために,運転行動を全てモデノレ化すると,それらと車両運動を関連づけるモデルを作成しなければならない.これには困難が予想:される上に,できあがったモデルの妥当性を評価することが難しい.そこで,本研究では,速度,加速度,車間距離などの車両挙動に関連するパラメータを車両毎に異なる値を与えてモデル化する方法1をとっている. 研究内容は2つに分けられる.第1は,交通の実データを調査し,それを解析して車両毎の個性をモデル化し,それを用いてシミュレーションを行うことである.第2は,交通に限らない広い意味で心理バイアスの数理モデル化に関する研究である. 第1の目的のために,実際の一般車両の走行の様子をビデオ撮影し,そのデータから車輌の車間距離と速度の関係,速度と加速度の関係を評価した.データにっいて最小二乗近似を行い,平均値と分散を求めた.得られたデータを片側2車線道路の交通流シミュレーションに適用した.異なる走行車両密度でシミュレーションを行い,単位時間あたりの交通量を測定した,車輌の挙動(速度と加速度)が平均値に従う場合と平均値と分散によって車輌ごとに異なる値をとるとした場合を比較すると,後者のほうが最大交通量が減少した.そこで,車間距離の取り方についてさらに調査すると,実データの最小二乗近似から求めた車間距離より,も少し車問距離を小さくすると最大交通量ボ増大するが,小さくしすぎると交通量が減少することが確かめられた. また,第2の目的のために人工市場モデルにおける株取引のシミュレーションモデルについて研究を行った.売買行動が正規分布に従う人工市場をマルチエージェントで作成し,これを元に市場参加者の行動が心理バイアスに左右される人工市場を作成した.心理バイアスとしてはフレーミング効果とプロスペクト理論を考えた.結果より,フレーミング効果が株価の短期的な変動に影響していることが確かめられた.また,これらのモデルを用いていくっかの会社の株価を創発した結果,心理バイアスを考慮したモデルの方がどちらかといえばより現実に結果を示すことを確かめた.
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