研究概要 |
本研究は、グループ意思決定のひとつの例である交渉を知的計算機支援することを目的に,人間性を持った知的エージェントを構築した.このシステムは,基本的には交渉相手の譲歩量と,各属性に対する交渉者双方の固執の度合に基づき,人間のあいまいさを模倣して柔軟に妥結点を探索するものである.知的意思決定機能としては,人間の価値判断処理に有効である階層分析法(AHP)にファジイ制御を応用したシステムの構築について検討した.従来のAHPでは,一対比較の整合性が取り難く,意思決定者に大きな負担を与えることがあるのでこれを改善するため,ファジィ数を用いることによってこの整合性問題の負担を少なくすることを試みた.ファジィAHPの具体的な方法として,一対比較結果を表現する修飾語に対して一対比較者の感覚に合致するように三角型ファジィ数を割り当てた.そしてさらに意思決定者の満足のいく表現の精度を高めるため,メンバーシップ関数を自動的にチューニングする方法として,進化型計算の一手法である遺伝的プログラミングを用いる方法を考案した.そして,進化過程においてより効果的な最適化を可能にするため,カオティックな要素を取り入れることによって、メンバーシップ関数の創成がより多様化し、関数同士が相互に連係して生成されるようなチューニング手法を提案した.実務的な交渉事例としては,(1)労働交渉問題、(2)M&A交渉を取り上げ、システム構築を試みた.その結果,事例に適したメンバーシップ関数を見つけることができ,また他のM&A事例でも評価者に適したメンバーシップ関数が得られるものと考えられた.
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