研究概要 |
人類が蓄積してきた知識の最も貴重な部分のひとつが学術知識である.これを体系化し,学習資源として容易にアクセスできるようにすることで,人類の知的活動をさらに効果的にすすめることができる.社会においてそのような需要が存在することを,知識に関連する諸研究や諸政策の目標と方法をメタ的に分析することで,明らかにすることができる.さらに,認知の科学が蓄積してきた人類の知識についての知見が,知識の効果的な体系化と資源化にどのように貢献できるかを考察し,認知科学による介入の指針を提案した.本年度は,心の科学からの拡張として学術領域研究のためのオントロジー設計を試みた.具体的には,医療,人文学から事例をもとめ,オントロジーによるアプローチが実際にどのような有効性を持つのか分析を試みた.医療現場における言語コミュニケーションのエラーの分析を通じて,より良い知識共有のための認知科学的介入の方法について,オントロジーを用いたアプローチを提案した.さらに,教育学,宗教学,文学を含む人文学研究における認知科学的介入の需要について検討し,現段階では潜在的な需要にとどまるが,人文学の科学的実質化のために重要な貢献ができる可能性を指摘した.個別のオントロジーの構築を,感情語彙の意味領域でおこなった.また,研究支援の具体的な提案として,人文学研究者が多人数で分散的にオントロジーを構築できる分散オントロジー・エディタを設計,実装した.
|