配分額 *注記 |
3,730千円 (直接経費: 3,400千円、間接経費: 330千円)
2007年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2006年度: 1,000千円 (直接経費: 1,000千円)
2005年度: 1,300千円 (直接経費: 1,300千円)
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研究概要 |
網膜は,『脳の覗き窓』と呼ばれる興味深い神経回路であり,脳神経システムを理解する最適なシステムの一つとして,神経科学や情報科学等の対象として数々の研究が進められてきた『神経研究の宝庫』といえる神経組織である.従来研究によって,網膜を構成する神経細胞のうち,視細胞,水平細胞,双極細胞,神経節細胞についてイオン機に基づいた数理モデルが完成すると共に,細胞膜に存在する各イオンチャネルが細胞の電位応答に及ぼす影響等,従来の神経科学な実験手法のみでは十分な解析が困難であった要素レベルの特性が網膜細胞の情報処理に果たす具体的な役割を解析することが可能となった.その結果,網膜の数理モデル研究は,単一細胞レベルの基本的なモデル化が達成され,要素レベルの特性が網膜機能全体に与える影響の解析や細胞を相互に結合した網膜神経回路レベルの数理モデルへと発展させる新たな段階に達した。 本研究では,光情報を受容する最初のステージである杆体視細胞ネットワークの数理モデル構築,および,網膜の出力を担う神経節細胞の数理モデル構築を進めた.杆体ネットワークについては,解剖学的実験に基づき杆体相互の結合を数理記述したリアリスティックな2次元モデルを完成させた.その結果,杆体ネットワークには杆体外節の光変換機構のスローな特性を補償し時間分解能を向上させる機能的・構造的意義があることを見出した.これは網膜生理の分野で30年間謎とされてきた現象の背後に潜むメカニズムを解明したものである.また,スパイクを生成する神経節細胞は時間的精度の高いスパイク発火パターンを示すが,こうした特性が細胞膜上の個々のイオンチャネルの確率的な挙動に由来することを見出した.これは一見不規則に思える確率的な挙動が神経細胞の情報処理に安定性,正確性を与え得ることを意味する興味深い知見である。
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