研究課題
基盤研究(C)
統合失調症死語脳研究において発現の異常が報告されている脂質伝達物質としてのcPLA2の中枢神経系における働きを統合失調症の発病要因との関係で調べた。まずcPLA2の遺伝子欠損マウスの生理学的特徴を調べた。遺伝子欠損マウスは野生型とほぼ同等の出生率を示し、特別な外観上および通常の行動における表現型に異常を示さなかった。生後4週前後のマウスの脳より海馬を取り出してスライス標本を制作し、CAl領域より電気生理学的な解析を行った。集合電位およびEPSPを観察すると、通常のシナプス反応には変化が認められなかった。また遺伝子欠損マウスでシナプス可塑性を誘導すると、長期増強現象(LTP)は誘導されたが、LTD誘導がほぼ完全に抑制された。cPAL2の下流に存在するアラキドン酸カスケードがLTD誘導抑制に与える影響を調べた。CAI錐体細胞パッチクランプをおこない、ガラス電極を通して細胞内に5-HPETEを拡散させて、遺伝子欠損マウスで低下していると考えられているアラキドン酸カスケードを補償したがLTDは回復しなかった。12-HPETEを同様の方法で細胞内に拡散させた後にLTDの誘導刺激を与えるとLTDが誘導された。以上の結果より12-HPETEの活性がLTDの誘導に必要であることがわかった。次にストレスが中枢神経系に与える影響を、ラットで調べた。拘束や強制水泳ストレスをかけると海馬シナプス反応においてLTPの誘導が阻害されることがわかった。また、水迷路試験において空間学習機能が著明に低下し、驚愕反応が有意に亢進していることがわかった。このようなストレスの効果は付加後1日目では起こらず、一週間後に起こることが判明した。またグルココルチコイド受容体の阻害薬が驚愕反応の亢進を抑制した。今後脂質伝達物質とストレスのシナプス可塑性における関連性を調べ統合失調症の発病メカニズムとしての可能性を検討したい。
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Neurocomputing 70巻 10-12号
ページ: 2055-2059
Neurocomputing. Volume 70, Issues 10-12
Neurocomputing 70(10-12)
ページ: 20055-2059
Neuroscience (In press)
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