研究課題
基盤研究(C)
1)Vlgrl分子の機能ドメインに関する検索本実験を遂行する段階で、海外のグループがVlgrl分子と結合する候補を報告した。我々は、実験の遂行を促進するため、海外の他の研究グループとの共同実験としてVlgrl分子と結合する分子の探索を行った。その結果、Vlgrl分子は、内耳有毛細胞不動毛基部に存在する分子群と結合することが判明した。2)Vlgrl遺伝子欠損マウスの難聴の原因解析Vlgrl遺伝子欠損マウスにおける難聴を聴性脳幹反射および耳音響反射にて検討した結果、内耳性の難聴である可能性が高いことが判明した。そこでVlgrl遺伝子欠損マウスの内耳を、走査型電子顕微鏡を用いて、観察したところ、内耳有毛細胞の不動毛に乱れを生じていることが判明した。Vlgrl分子は神経上皮のみでなく、胎生期後期より、出生後10日頃までの内耳有毛細胞の頂部に発現していることを、免疫組織学的に見出した。さらに、免疫電顕法にて、Vlgrl分子の発現部位を同定した。マウスでは胎生期後期より、生後10日程度まで、内耳有毛細胞の不動毛基部で不動毛と不動毛の間に存在することが判明した。その部位、および発現の時期は、不動毛間をつなぐアンクルリンクに相当することがわかった。そこで、透過型電子顕微鏡を用い、Vlgrl遺伝子欠損マウスにおいてアンクルリンクの形状を観察した。その結果、Vlgrl遺伝子欠損マウスにおいては繊維状の構造物は不動毛間に見出すことが出来たが、明らかなアンクルリンクは確認できなかった。アンクルリンク構造はカルシウムイオンが存在しない状況下では消失することが知られている。そこで、生後2日目の正常マウスの内耳をカルシウムイオンキレート剤であるBAPTA存在下で2時間培養した後、Vlgrlの発現を検討した。その結果、VlgrlはBAPTA存在下で消失することが判明した。以上の結果より、Vlgrl分子は、内耳有毛細胞の不動毛発達に重要な役割を果たしており、アンクルリンク構造と関係が深いことが明らかとなった。
すべて 2007
すべて 雑誌論文 (2件)
Genes Cells 12
ページ: 235-250