研究課題
基盤研究(C)
細胞内情報伝達において重要な役割を果たしているタンパク質のチロシンリン酸化は、プロテインチロシンキナーゼ(PTK)とプロテインチロシンポスファターゼ(PTP)の活性のバランスによって決定される。中でも、受容体型のPTKとPTPは、細胞外環境の情報を読み取り細胞内に情報を伝達する上で、重要な役割を担っていると考えられている。しかしながら、受容体型PTPが生体内においてどのような情報伝達系に機能しているかについてはよく分かっていない。これは、PTPの基質分子がほとんど同定されていないことに起因している。受容体型PTKであるEphはephrinをリガンドとして、軸索ガイダンス、細胞移動、脳内の領域特異化、シナプス形成やシナプスの可塑性等、神経系の発生や機能維持において重要な役割を果たしている。網膜神経節細胞に発現するEphは、網膜から視蓋へのtopographicな投射形成において重要な役割を果たすことが知られている。本研究において、Ephを基質とするPTPを探索したところ、受容体型PTPの一つであるPtproがEphのA, B両タイプを共に基質とし、それらの活性を負に制御することを見出した。さらに、生化学的な解析を進めたところ、PtproはEphの活性に重要な役割を果たしている膜貫通ドメイン近傍に存在するリン酸化チロシン残基を脱リン酸化することが判明した。網膜視蓋投射の形成においてはEph受容体が重要な役割を果たしているが、網膜におけるPtproの発現を人為的に修飾することにより、視神経軸索のephrinに対する反応性と、網膜から視蓋への投射を自在に変化させることができた。本研究においては、神経回路網形成におけるPTPの役割を、基質であるEphの機能制御という観点から分子レベルで解明した。これが本研究の独創的な点といえる。
すべて 2006
すべて 雑誌論文 (7件)
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