研究課題
基盤研究(C)
本研究は、脳内Aβ分解代謝低下がアルツハイマー病の原因になる可能性を明らかにし、アルツハイマー病の克服に新たな戦略的手段を提供した。実験結果:1、電気生理学実験:海馬ニューロンシナプス伝達機能を測定した。若齢マウスに於いてCA1とDGのシナプスにLTPの障害が、APP-tg及びNeprilysin-KO/APP-tgマウスに確認された。特にNeprilysin-KO/APP-tgマウス海馬シナプスLTPがシングルAPP-tgマウスより有義に抑制されることが認められた。2、行動学実験:動物の記憶学習力がAPP-tgマウスに比較してNeprilysin-KO/APP-tgマウスの方が有意に低下したことが確認できた。3、生化学実験:Western blotting法にて動物脳内Aβを定量した。Neprilysin-KO/APP-tgマウス脳内可溶性AβオリゴマーレベルがAPP-tgマウスより3倍近く上昇した。4、免疫組織染色:若齢(4と9か月)Neprilysin-KO/APP-tgとAPP-tgマウスの間に老人斑沈着の差が認められず、若齢Neprilysinノックアウトマウスに於ける代謝低下によるAβ上昇に起因した記憶障害に於いては老人斑沈着の関与が認められなかった。まとめ:1、脳内Aβ分解低下はアルツハイマー病の発病に貢献する。2、代謝低下によるAβ蓄積過程で不溶性Aβ斑より可溶性Aβ複合体が早い時期にシナプス可塑性を抑制する。3、脳内Aβ分解経路活性を高めることによるアルツハイマー病の予防と治療が可能である。4、本研究で樹立した動物モデルのNeprilysin-KO/APP-tgマウスは従来のシングルAPP-tgマウスより、他のAPP分解産物に変化なしにAβのみ増加し、脳内Aβ蓄積の病理及び病態生理の研究により合理的動物モデルである。
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