研究課題
基盤研究(C)
アルツハイマー病は、老年疾患であるがゆえに高血圧症や糖尿病などの生活習慣病がその背景に存在することが多い。特に脳血管障害や2型糖尿病、中でも重症型のインスリン抵抗性糖尿病が本病の背景にあると認知症への進行が早まり予後も悪い。そこで本研究では生活習慣病要因を合わせ持つ動物モデルを作成し、その発症機序ならびに治療薬の探索を行った。(1)脳血管障害とアルツハイマー病の併発モデル:老人斑の構成成分であるAβはその立体構造により神経毒性が異なることが考えられる。一過性の脳虚血を施したラットにオリゴマー体Aβおよび凝集体Aβをそれぞれ7日間連続微量注すると、両者ともに8方向放射状迷路改題において有意な障害が発現したが、海馬におけるアポトーシスの発現は凝集体のみで認められた。空間記憶障害に対してはドネペジル、メマンチンは有意な改善作用を発揮したがアポトーシスを抑制するには至らなかった。カルシウム拮抗薬であるニルバジピンは空間記憶障害の改善に加えて海馬のアポトーシスも抑制した。(2)糖尿病とアルツハイマー病の併発モデル:ラットに高脂肪食を連続摂取させるとインスリン分泌高進に加えてインスリン抵抗性糖尿病の病態を呈するようになる。このようなラットにAβを脳室内微量注入を行った結果、水迷路課題において有意な空間記憶障害が認められた。自然発症で糖尿病の病態を呈するGKラットを用いて同様の実験を行ったところ、耐糖能の低下ならびにインスリン抵抗性を発現したラットでは水迷路における空間記憶障害が生じることが分かった。インスリン抵抗性は細胞膜のラフトマイクロドメインの構造異常であることも突き止め、この部位の機能異常がAβの切り出しや神経毒性の発現にも深く関わることが示唆された。以上の結果から、脳循環障害あるいはインスリン抵抗性糖尿病はAβによる神経毒性を受けやすくすること、またその機序には細胞膜のマイクロドメインの構造異常が関わることが示唆された。
すべて 2007 2006 2005
すべて 雑誌論文 (19件)
Journal of Pharmacological Sciences 103
ページ: 83-91
Biological & Pharmacceutical Bulletin 30
ページ: 698-701
Journal of Pharmacological Sciences 30
10024312106
J Pharmacol Sci. 103巻1号
Brain Research 1097
ページ: 216-223
Brain Research 1097巻1号
Brain Research 1069巻1号
ページ: 54-62
Phytotherapy Research 19
ページ: 450-453
British Journal of Pharmacology 145
ページ: 1035-1044
Brain Research 1059
ページ: 7-12
Pharma Medica 23巻
ページ: 143-155
Phytotherapy Research 19巻
ページ: 2468-2474