研究概要 |
本研究は,脳幹の水平性サッケード発現神経機構と固視神経機構の問の相互機構のうち,上丘吻側部の固視領域による下位の脳幹におけるサッケードgeneratorに対する制御機構を解析した。 最近の我々の研究によりinhibitory burst neuron(IBN)は両側上丘吻側部から2シナプス性の抑制入力を受けることが明らかとなった。この抑制はおそらくpause neuron(PN)を介しているのでないかと推定されるので,本研究では,上丘の吻側部からPNへの入力様式について解析した。 1,クロラロース麻酔をしたネコで,IBNから細胞内記録を行い,両側上丘の吻尾側方向に4本の刺激電極を植え,電気刺激を行い,上丘,特にその吻側部からIBNへの入力様式を解析した。2,これまでの我々の研究で,上丘吻側部からIBNへは2シナプス性の抑制性入力が存在することが明らかになったが,その中継ニューロンの同定までには至らなかった。そこで,この中継ニューロンがPNであることを証明するため,IBNから細胞内記録をとり,両側上丘吻側部の電気刺激と,PN領域の電気刺激を組み合わせて空間的促通を証明した。3,左右の上丘内の系統的刺激実験に脳幹切断実験を組み合わせて,左右上丘の固視領域からIBNへの抑制経路を決定した。4,次に,PNから細胞内記録を行い,両側上丘の吻尾側方向に並んだ4箇所の電気刺激を行い,上丘からPNへの入力様式を解析した。5,dextran-biotinの微量注入により,上丘吻側部からPNへの投射を明らかにした。以上の解析により,上丘吻側部が尾側部のサッケード領域から独立した固視領域(fixation zone)であり,固視中にburst neuronの活動を抑制しサッケード発現を抑制していることを示す神経回路の実体を明らかにすることができた。
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