研究課題
基盤研究(C)
延髄孤束核(NTS)は、生体内の諸器官からの情報が集約的にインプットされる"gate"になっている点で特異的な脳神経核である。これまでの研究では、解剖学的手法や従来のマイクロ電極法、きらにはパッチクランプ法の導入により、これらの循環反射系を構成するひとつひとつの要素に関して、細胞やチャネルのレベルにおいて解析が進められてきた。こうした研究は、反射系を構成するひとつひとつの要素の性質を理解し、全体を捉えようとするものであるが、孤束核はそれらの要素としてのニューロンの機能的集合体であり、そこに要素論のみでは解決できないシステムとしての特有の機能が発現している。システムレベルでの研究のストラテジーとして、われわれはこれまで、比較的単純なモデル系として発生初期の鶏胚/ラット胚脳幹摘出標本を実験対象として、これに「ニューロン活動の光学的イメージング法」を適用し、舌咽/迷走神経関連核の機能発生の初期過程を明らかにしてきた。この研究を遂行する過程で、(1)embryoでの比較的単純な系からadultでの複雑な系にどのようにして成熟していくのか、(2)舌咽神経と迷走神経を介して入ってくる情報が、孤束核においてどのように処理されて出力されていくのか、ということが次に問題になってきた。そこで、本研究では、膜電位感受性色素を用いた「ニューロン活動の光学的イメージング」と、ニューロン活動に伴う内因性の光学的変化から脳皮質活動を光学的に計測する「内因性光学イメージング法」を哺乳類延髄孤束核に適用し、これにニューロトレーサーを用いた形態観察を併用して、舌咽神経や迷走神経を通して伝えられた心血管系や呼吸器系からの入力情報が、孤束核内においてどのような機構により処理されて出力されていくのかを個体発生学的に解析した。その結果、迷走神経から対側への新たな直接投射が存在することやarea postremaへの投射が発生の早い時期から存在し、機能的にも同時期から活動し始めることが明らかとなった。
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