研究概要 |
1 マウス心室筋細胞において細胞外を酸性にすると外向き整流性のクロライド電流(I_<Cl,acid>)が発生することが見出された。I_<Cl,acid>はpH7以下で発生しEC_<50>値はpH5.9であった。大きな脱分極電位ではI_<Cl,acid>に時間依存性の活性化が見られた。同様の電流はマウス心房筋、モルモット心房及び心室筋細胞でも記録できた。DIDS、niflumic acid、glibenclamideなどはI_<Cl,acid>を抑制したが、伸展感受性Cl-電流(I_<Cl,vol>を抑えるtamoxifenは無効であった。I_<Cl,acid>の活性化は細胞内ATP依存性を示さず、またその活性化に細胞内Ca^<2+>やGproteinは関与していなかった。マウス心室筋において酸性化により活動電位持続時間が有意に延長することが観察された。以上の成績は、I_<Cl,acid>とI_<Cl,vol>はそれぞれ異なるアニオンチャネルグループに起因する電流であることを示す。2 モルモット心室筋細胞においてATPは単独ではβ-agonist依存性のCFTR Cl電流(I_<Cl,PKA>)を活性化しなかったが,Isoprenaline(Iso)によってI_<Cl,PKA>を活性化した後ATP(50μM)を作用させるとほぼ全実験例でI_<Cl,PKA>が増加した。Adenosine(50μM)とAMP(50μM)はI_<Cl,PKA>を抑制するのみで,ADPの効果はATPと同様であった.ATPによるI_<Cl,PKA>の増強効果はP2-purinoceptor刺激によると考えられる.同様なATPの効果はforskolinによって活性化したI_<Cl,PKA>に対しても見られた.モルモット心室筋のI_<Cl,PKA>はPKIC activatorであるPDBuによって増強されるが,PDBuで増強したI_<Cl,PKA>にATPを作用させたところ,ATPはもはや電流を増強せず,その電流抑制効果のみが見られた.ATPによるP2-purinoceptor刺激はPKCの活性化を介してI_<Cl,PKA>を増強すると考えられる.
|