研究概要 |
マウスをはじめとする哺乳類の卵巣内には多数の原始卵胞や発育途上卵胞が含まれているが,生涯の内に排卵まで至る卵母細胞の総数はその一部に過ぎず,大半は利用されずに終わる.本研究では,効果的なマウス未成長卵母細胞の体外培養法の確立を目的として,卵巣由来株化細胞の共培養系にて安定的にグループ培養を行う新しいシステムを考案し、その有効性について以下の検討を行った. B6CBF1 12日齢雌マウスから卵巣を採取し,コラゲナーゼおよびDNase Iにより分離した卵母細胞-顆粒膜細胞複合体(OGCs)を,5%FBS,100mIU/ml FSH,10mIU/ml LH,50ng/ml IGF-I 50ng/ml SCF添加αMEM中のコラーゲンインサートメンブレン上で,37℃の条件下で10または12日間培養することにより,卵母細胞を体外成長させた.卵母細胞の成熟誘起は,培養10または12日目に15IU/ml hCG+5ng/ml EGFを添加することによりin vitro排卵および卵母細胞成熟を誘起した.体外培養による卵母細胞の生存率,成長に伴う体積増加,成熟能および産子発生能は,性腺刺激ホルモン,細胞増殖因子添加および共培養系によって向上した.特に顆粒膜細胞の増殖促進が顕著であり,これらが内分泌調節も含めて核成熟能や細胞質成熟能の向上に寄与したものと推察された. 胎子卵巣(16-17dpc)からの体外培養系(器官培養+OGCs培養)においては,従来法に比べ卵母細胞の生存率の向上および成熟能が認められたものの,胚発生能は認められず,胎子卵巣からの体外発生に関しては本法の更なる改良が必要と考えられた. 以上の結果から,マウス未成長卵母細胞のIVC-IVM-IVF-ETにおける本培養システムの有効性が示された.
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