研究概要 |
本研究では,細胞接着性をもつRGDS配列とβ-シート構造を形成し自己組織化するペプチドを組み合わせ,3次元化可能な材料の創成を試みた.自己組織化可能なペプチドを分子設計し,再生医工学用足場となる自己組織化ペプチド集合体の構築を目的とした.また,血管内皮細胞と特異的に作用するペプチドの設計・検索も行った. これらペプチドの合成は,前年度と同様、液相法と固相合成法を組み合わせて行った.合成後,脱保護・脱樹脂反応を経て,HPLCを用いて分離精製し,目的物であるペプチドを効率よく得た. 自己組織化ペプチドの実験科学的ならびに理論科学的2次構造解析の結果,分子設計したペプチドは,目的通りβ-シート構造を構築することが明らかになった. さらに,設計したペプチド間の相互作用が濃度に依存して大きくなり,その後自己組織化することで安定化することが確認できた.RGDSを含んだβ-シート構造を有するペプチドは細胞の伸展率が他のペプチドに比べて優位であった.このことからRGDSが材料表面に突き出し,インテグリンレセプターと容易に相互作用することができると推測した.これらのペプチドからナノファイバー状,ハイドロゲル状,フィルム状などの3次元構造体を構築することに成功した. さらに,血管内皮細胞と特異的に作用するペプチドを分子設計し,細胞増殖活性を有することを見いだした.このペプチドは,水溶性高分子とハイブリッド化することでより有効であることも明らかになった. 以上の結果より,今回分子設計したオリゴペプチドは人工細胞外マトリックスとして再生医工学分野での応用の可能性が考えられる.
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