研究概要 |
1.複合脂質膜(HL)のヒト乳がん細胞増殖抑制効果と制がんメカニズム DMPC/5mol%_<12>(EO)_n(n=4,10,21,23,25)HLのヒト乳がん細胞に対する50%増殖抑制濃度(IC5。)の検討を行ったところ、複合脂質膜のIC5。はDMPC単一リボソームの1/2以下であり、顕著な増殖抑制効果が明らかになった。HLのTUNEL法による蛍光顕微鏡観察において緑色の蛍光が観察され、アポトーシスを誘導することが明らかとなった。一方、DMPC単一リボソームでは緑色に染色されなかった。さらに、HLのヒト乳がん細胞に対するアポトーシス誘導においてCaspase-3,-8,-9およびミトコンドリアが関与していることが明確になった。 2.HLのヒトリンパ腫瘍細胞に対する治療効果 リン脂質DMPCと非イオン性界面活性剤C_<12>(EO)_n(n=21,25)からなるHLがヒトリンパ腫瘍細胞MOLT-4およびRAJIに対して、in vitroにおいて顕著な抑制効果を示し、TUNEL法によりアポトーシス誘導を明らかにした。in vivoにおいてRAJI細胞移植がんモデルマウスに対して顕著な延命効果が得られ、正常ラットに対する安全性を確認した。 3.がん細胞膜をターゲットとするHLのヒト大腸がん細胞増殖抑制効果と制がんメカニズム 非イオン性界面活性剤C_<12>(EO)_n(n=4〜25)およびDMPCからなるHLのヒト大腸がんに対する増殖抑制効果をin vitroで検討したところ、HLの膜流動性と増殖抑制効果に明らかな相関関係を見出した。HLは大腸がん細胞に対してアポトーシスを誘導しており、カスペースを活性化していることを明確にした。HLは正常大腸細胞に対しては全く融合せず、大腸がん細胞のみに融合・蓄積することを一分子観察法を用いて初めて明らかにした。
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