研究概要 |
超音波診断装置で得られる臨床診断画像において,定量診断を行う際に安定な結果を得られるようなデータ収集および処理パラメータの最適化を行った。特に,初期段階のびまん性肝病変では,線維化した組織の構造が十分発達していないため,2次元断面の画像のみではその情報が十分に描出されず,安定した解析が困難となることを考慮した。 はじめに,初期病変においても安定した精度を出すために,超音波診断装置で連続的に収集できる3次元データを用いることを考案した。その際,生体内に入射する音波(ビーム)の特性によって,3次元方向の分解能がそれぞれ異なり,特にスライス方向へのデータ重畳が激しいことから,それらを軽減するためのフィルタ処理を施すことを提案し,モデル実験によって検証を行った。 また,生体中の散乱体密度とエコー信号の関係に着目し,解析時における関心領域の設定法や,複数の判定法の組み合わせなどについての検討を行った。 さらに,生体組織の音響特性を高速かつ高密度に計測するためのシステムを再構築し,複数の剖検肝試料について計測を行った。その結果,従来の4倍の速度で広範囲の計測が可能となり,計測環境の変化などによる精度低下を低減することができた。 このように,生体内の観察におけるデータ取得法(臨床)および生体試料の計測法(物性)の両者について精度を向上させたことにより,生体組織の固有の音響特性とエコー信号との関係をより詳細に結びつけることが可能となった。
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